ドバイ自治体が数か月で 250 以上のサービスをデジタル化

市当局では、わずか数か月で250以上のサービスをデジタル化しました。

世界経済が急速に進化していることを認識し、ドバイ市政府の指導者たちは、ポストデジタル世界での市民の繁栄を保証するために、Vision 2021を立ち上げました。Vision 2021は経済、社会、インフラの変化に関する野心的な目標を設定した包括的な計画です。Vision 2021は、UAE (アラブ首長国連邦) がイノベーション、ヘルスケア、教育、サステナビリティの分野で世界的リーダーとなるための6つの国家的優先事項に焦点を当て、UAE国民の安全と文化遺産を確保することを目的としています。

すでに非常に高い目標ですが、首都ドバイの指導者たちはVision 2021の実現を、アラブ首長国連邦が建国50年を祝賀する2021年12月のゴールデン・ジュビリーと同時に完全に達成したいと考えました。この計画は広範囲にわたる野心的で崇高な目標を掲げており、ターゲットを定義し、大規模な変化が国全体にもたらす影響を予測する作業は、容易なことではありません。しかし、これはほんの始まりに過ぎません。Vision 2021の約束するサステナブルな環境とインフラのコンセプトを現実に変換する重大な責務を割り当てられたのは、ドバイ市自治体のサービスおよびインフラチームでした。

政府の強いリーダーシップのもとで、ドバイ・ペーパーレス戦略が2018年2月にスタートしました。ドバイ・ペーパーレス戦略では、2021年以降、ドバイ市政府の職員や利用者が政府の業務を処理するために紙を印刷する必要がないようにすることを目標としています。「ドバイ市政府から、『ペーパーレス化率100%』と『2021年12月までに環境に配慮した生活にする』という目標を提示されたとき、私たちはどうすればこれを達成できるのか戸惑いました。ドバイのサービス、プラットフォーム、アプリケーションは過去20年間に構築されたものです」とドバイ市政府の主任エンタープライズアーキテクトを務めるPrakash Inbasekaran氏は述べています。UAEの国家計画Vision 2021の一環として、ドバイのペーパーレス戦略には政府サービスとテクノロジーの近代化も含まれています。<\\/a>「ドバイ市自治体では、2000年や2005年など、20年以上前に作られたアプリケーションがまだ動いているんです。2021年12月までにこのすべてのデジタル化を実現し、作業者や国民をどのようにデジタル化に適応させるか。これは本当に急速な変化です」

すべてを近代化する

Inbasekaran氏と彼のチームは2年足らずの間に、紙ベースのサービスシステムをデジタルに変える必要があります。Inbasekaran氏によると、ドバイ市自治体には6つの部署があり、36の異なる課と約13,000人の職員がいるといいます。プロジェクト開始以前は、自治体の業務の約30%がオンラインで行われていましたが、その裏で、それらのサービスでさえバックオフィスの手作業による入力が必要でした。「ドバイ市の指導者たちは今後5年以内に、ドバイがスマートシティのナンバーワンになることを望んでいます。基本的に、2番や3番にはなりたくないというのが、彼らからの重要なメッセージです。デジタル化とスマートシティに関しては、私たちは本当にこれに向かって邁進しています」とInbasekaran氏は述べています。手動からデジタル・プロセスに進化するのは大規模な事業です。ドバイ市政府のチームは、デジタル化プロジェクトをより管理しやすい部分に分割するために、いくつかの内部向け要件を定義しました。

    紙ベースの内部サービスをすべて自動化する。

  • 相互接続されたプラットフォームを作成して複数の部署からデータにアクセスできるようにすることで、内部でのやり取りを統合し追跡する。
  • 自治体における紙の使用量を、年間数百万枚からゼロにする。
  • サービスのトランザクションを遅延させる官僚主義的な要件を削減する。
  • 複数サービスを単一ウィンドウのアプリケーションに統合してコストを削減する
  • ドバイ市政府チームは内部サービスやシステムの最適化に加えて、市民と接するすべての社会事業機関と事業機関のデジタル化と近代化を完了させる必要がありました。
    これは、300万人近くが利用する100以上の異なるサービスを統合、再構築、最適化することを意味します。「明らかに、誰も列に並ぶのが好きではありません。役所に行くときに、政府からサービスを受けるために列に並んで待つことは本当に嫌なのです」とInbasekaran氏は述べています。このような背景から、ドバイ首脳部は2021年12月までに、すべての政府機関や事業体に対してサービスをデジタル化するよう命じ、手作業をいっさい禁止しました。またドバイ市政府チームは、Vision 2021ロードマップの一環として、一連の外部向けのデジタル・トランスフォーメーション・プロジェクトを作成しました。

    • 2021年12月までにすべての部署とサービスをデジタル化する。
    • ドバイ市政府の部署と市民が対話するための単一のポータル・エントリーポイントを作成する。
    • サービスのトランザクションに必要な人的資源の要件を削減する。
    • サービスのトランザクションに関わるコストを削減する。
    • 月間数十万件のトランザクションと数百万人の訪問者に対応するユーザー・フレンドリーなプラットフォームを構築する。

新しい目標への挑戦、古い不具合との戦い

ドバイ市政府チームは、野心的な目標と限られた時間があることを理解していました。しかし、プロジェクトのスコープを広げ、ビジネスから要件を集め始めると、別の課題に直面しました。それは、以前のプロジェクトの結果があまり良くなかったため、部長の信頼を取り戻すことでした。

「彼らは何百万ドルも投資して、IT部門が部署のデジタル化の期待をすべて満たしてくれると信じていましたが、時間が掛かりすぎたためにほとんど実現しなかったのです。例えば、プロジェクトを3年以内に納品すると私が約束したとしましょうか、でもその間に事業はすでに変化しているのです。彼らは興味を失い、IT部門が市民や事業にとって付加価値のあるものを提供してくれるという信頼を失ってしまうのです」とInbasekaran氏は述べています。

過去のプロジェクトはウォーターフォール型の方法論を使っていましたが、Inbasekaran氏によると納期限を過ぎてしまったため、部署の責任者たちは落胆したそうです。IT部門が納品したソリューションは、要求の10%程度しか満たしていなかったのです。また、スコープ・クリープも問題になりました。現代の機能要求に応えようとすると、納期がさらに遅れました。2019年、ドバイ市政府チームは、UAEの50周年記念のスケジュール通りにプロジェクトを完了させるためには、より良いパートナーとより良いプラットフォームが必要だと判断しました。

ドバイ市政府ではすでに、何百万もの大金をほかの競合製品に投資していました。ローコード・デジタル化プロジェクトに特化したソフトウェア開発およびIT外部委託企業のRapidData Technologies社で人事および事業開発責任者を務めるAysha Begum氏は次のように述べています。「しかし、これだけ投資しても、目標の半分も達成できなかったのです。彼らはMendixというプラットフォームは知っていましたが、Mendixのポテンシャルを理解させ、本当に契約を結ばせるような強力な事業者がいなかったのです。そこで、私たちが市場に参入しました。Mendixのポテンシャルの高さと、目標達成を支援するとどれくらいスピードアップできるかを紹介しました」

正しいツールと正しいチームで構築する

ドバイ市政府は、2019年にRapidData Technologies社との提携を開始しました。RapidData Technologies社は、地方自治体や大規模な政府機関、フォーチュン500企業との取引実績があります。同社の迅速な市場参入戦略に加えて、スケーラビリティとセキュリティをIT最適化に組み込んで成功した実績は、ドバイ市政府プロジェクトに完璧に適合していました。

「RapidData Technologiesは、ドバイ市政府チームにMendixを導入しました。しかしこれほど多額の投資をしてきたチームを説得するのは、簡単な仕事ではありませんでした」とBegum氏は述べています。

RapidData Technologies社がサンプルデモを完了した後、ドバイ市政府チームは2019年夏に、高いデジタル化目標を達成するためにMendixをプラットフォームとして使用する契約に署名しました。ドバイ市政府チームのプロジェクトマネージャーでテクニカルリーダーのJohn Socorro氏は次のように述べています。「市場にあるさまざまな製品を検討しました。他のプラットフォームでは、テストするたびに何かが壊れてしまうので、Mendixがより良い製品であると認識しました。Mendixは非常に安定しています。

また、Javaをベースとしている点もメリットでした」ドバイ市政府チームはRapidData Technologies社をパートナーとして、Mendixをローコード・プラットフォームに採用し、すべての内部および外部サービスのデジタル化という不可能と思われるタスクを2年以内に達成する準備が整いました。

ローコードによる納品

ドバイ市 (DM) は、アラブ首長国連邦最大の政府組織で、数千人の職員と数十種類のサービスを有しています。政府関係者の設定した課題を達成するために、ドバイ市政府のチームは、市政府職員が利用するすべてのサービスに素早くアクセスできる使いやすいアプリケーションを提供する必要があると理解していました。ペーパーレス化、自動化による生産性の向上、そして何よりスケジュール通りに開発を終わらせることが重要だと考えていました。

「私たちは、ドバイ市職員が日常的に利用するすべてのサービスに迅速なアクセスを提供する、Smart Officeという名称のプロジェクトを開発しました。Smart Officeは、電子署名やPDF注釈の活用により、紙での印刷を不要にします。紙ベースの帳票をデジタル化し、ワークフローを自動化することで、時間の短縮と生産性の向上を実現します。また、モバイルプッシュ通知による高度な通知機能を実現し、Alexaのボイスコマンドも組み込みました」とBegum氏は述べています。紙の使用を廃止するという指導者たちの命令に取り組むことに加えて、Smart Officeは政府の承認とトランザクションに必要な時間を短縮しました。Smart Officeは、多くのサービスウェブサイトを1つの中央ポータルに統合し、集中的なセキュリティ最適化と、異なる政府事業部門へのユーザーフレンドリーなアクセスを実現しています。RapidData Technologies社のリードMendix開発者であるLaith al-Qudah氏は次のように語っています。

「音声をタスクに変換するAlexaの音声統合とスマートカレンダー機能 (会議の作成とスケジュール、タスクの追跡と割り当てを自動的に行う) は、当初の機能要件を超える革新的な統合でした。5,000人以上の職員が日常的に使用するエンタープライズ・アプリケーションを構築することは、生やさしいことではありませんでした。1つの部署に1つのソリューションを構築すると、ほかの部署や課にも影響を及ぼします。そのため、これらの部署間でより多くの議論が行われ、より多くの要件が出てくるでしょう。しかしMendixでは、最初のアイデアでこのような問題を解決することができます。2週間ごとにビルド、レビュー、リリースを行っています。リリースのスピードが速かったため、全関係者が喜びました」とal-Qudah氏。ドバイ市政府のチームは、3か月以内に2つの主要プロジェクトに導入し、急速に前進することができました。チームはSmart Officeに加えて、民間企業から各種自治体手数料を徴収するための外部向け決済ポータルDM Feesを構築しました。

Smart Officeは、すでに市政府内部の紙使用量を年間400万枚削減し、内部サービスの50%以上の電子化を完了しました。Begum氏によると、チームは目標の完成納期を達成することに100%の自信を持っており、Socorro氏も同意見です。「私自身、昔は.NETの開発者でしたから、もしSmart Officeを従来の技術で実装したら、1年から1年半はかかったと思います。それほど大規模なスケールなんです。そして、これをRapidData Technologies社の協力のもと、非常に短期間で実現することができたのです。もちろん、多くの努力と時間を費やしましたが、Mendixのような高速なツールがなければ、実現できなかったと思います」とSocorro氏は述べています。

より速く、より多くの仕事をこなす

Smart Officeの場合、そのスコープは広かったのですが、Mendixをプラットフォームとすることで、プロジェクトの背後にあるプログラムやアプリケーションのハイレベルな開発複雑性はあまりありませんでした。ドバイ市政府のチームは、ローコード・プラットフォームを広範囲に使って作業の大部分をこなし、例えばフォームや作業指示などを作成して、より経験豊富な開発者のバックログを減らしました。また、ローコードは事業チームとITチーム間のコラボレーションを増加させ、要件収集、ワークフロー管理、ユーザーストーリーの作成段階を通じて、事業チームの役割の重要性を高めました。事業チームが開発中のプロトタイプを素早くモニタリングして対応できるため、ITチームはスピーディーに方向転換して事業チームの要件を簡単に満たすことができます。例えば、ドバイ市のチームは、アナリストや他のビジネス利害関係者が設計したワイヤフレームを、ドラッグ&ドロップ操作のビジュアル開発インターフェースを使ってワークフローに組み込むことができました。その結果、開発者自身が作った、開発者からの要求や事業チームの期待を満たすと分かっている、プロジェクトを開始できるテンプレートができたのです。「すべてのアプリケーションがPMP標準に従っているため、事業チームは非常に満足しています。そして、事業チームが開発をコントロールできるのです。これは、彼らが求めていた主要なコラボレーションであり、Mendixの重要な付加価値です」とInbasekaran氏は述べています。

al-Qudah氏にとって、ローコード・プラットフォームの最大の利点の一つは、基盤となる技術スタックを計画し構築する時間を節約できることです。「データベース、フロントエンド、バックエンド、そしてそれらの間のすべての通信を準備した昔のやり方を覚えています。しかしMendixでは、もはやそんなものは存在しません。私たちはビジネス層のみに焦点を当て、ほかには何もしません。これはとても素晴らしいことです」とal-Qudah氏は述べています。

Socorro氏の指摘によると、Javaベースの柔軟性と、大量のユーザーとデータを扱うアプリケーションを開発できることが、ローコード・プラットフォームの拡張性を示しているといいます。「Mendixがどのようにデータを構成しているか、バックエンドでどのようにインデックスを作成しているか、データの観点からどのようにセグメンテーションを行っているかなどを実際に分析したところ、すべて完璧なものでした。長年の間に遅くなったりはしません。これは、完璧に調整されたアプリケーションです」とSocorro氏は述べています。

RapidData Technologies社と提携したドバイ市政府チームは、プロジェクトの立ち上げ直後に、ローコード開発の価値を各部署のリーダーたちに示しました。Inbasekaran氏によると、複雑な移行サービスのほとんどは、わずか7か月の開発期間でMendixプラットフォームに実装されたとのことです。コストは4分の1に削減され、開発のタイムラインとスケジュールは65%以上短縮されました。「このようなペースでサービスを提供することができ、大変満足している」とInbasekaran氏は述べています。

収益の変革

デジタル化プロジェクト以前のドバイの市民向けのサービスは、ほとんどが手作業で物理的に行われていました。このようなトランザクションには高い人件費と長大な時間がかかり、その結果、自治体の収入が減少し、遅延することになります。政府は目を見張るほど広大な不動産をドバイ市全域に所有しており、他の機関、私企業、さまざまな個人に賃貸しています。ドバイ市政府チームが手がけた最初の公共プロジェクトは、自治体の不動産賃貸、都市計画、建設部門への支払いを円滑化するものでした。「私たちはこれをAsset Managementと呼んでおり、地所の賃貸を含むすべてをMendixプラットフォームを通じてデジタル化することができました」とInbasekaran氏は述べています。

Asset Managementとドバイ市政府の料金アプリケーションを組み合わせることで、ドバイ市はデジタル化プロジェクトの早い段階で、高収益の公共向け最適化を2つ展開することができました。「ホテル、レストラン、環境庁、そしてビルのオーナーや市民から多額の料金を徴収しています。ドバイ市政府に支払われる数十億ディルハム相当の料金を、すべてMendixを使って自動化しているのです。これこそ、私たちが言っている変革です」

単独ポータルの構築

この価値の高いデジタル化の成功により、チームはより野心的な要件に着手することが承認されました。何百万人ものユーザーと100以上の異なる政府事業機関を接続する、単独の公共ポータルの構築です。プラットフォームは、全市規模の市民と政府の同時のやり取りを処理可能で、ユーザーが異なった政府サービスの間を迅速にスムーズに切り替え可能である必要があります。各機関で重複している統合を一元化し、削減する必要があります。20年も前に作られた古いアプリケーションには、見直しと改善が必要です。政府機関全体で、膨大な数のユーザーデータを保存し、アクセスする必要があります。300万人がこのプラットフォームを使ってドバイ市とビジネスを行い、ドバイ市は世界とビジネスを行うことになります。「主な目標は市民の期待に応えることで、市民が利害関係者です。これらのサービスの利用者となるすべての市民が、サービスに簡単にアクセスできることを期待し、求めていました」とBegum氏は述べています。電子化以前は、市民が案件に必要な署名を得るために、何度も異なった部署を訪問することが当たり前でした。これは要求や、提供されているサービスの利用について当局から承認を得るまでに長い時間がかかるだけでなく、こういったトランザクションすべてにかかるコストを常に上昇させました。

「私たちは環境、安全衛生、食品安全、そして都市計画や建設の担当部署に対処しています。そして、ホテルやレストランに行っても、すべてドバイ市当局が監視し管理しています。私たちはこのように、ドバイ市民に対して膨大で多様なサービスの数々を提供しているのです」とInbasekaran氏は述べています。ドバイ市政府チームは、6月にプラットフォーム・ポータルを導入しました。Inbasekaran氏は、このポータルを「私たちのすべてのサービスの中核」と呼んでいます。これはまもなく、市民と政府間のすべての手続きのワンストップ・ショップに成長する予定です。

時間通りにデジタル化する

まだサービスの一部しか完了していませんが、市政府はすでに大きな成果を上げています。新しいサービスサイトのトラフィックは、1日に最大で9,000人の訪問者となっており、月間150万回以上のページビューとなっています。

「また、ローコード・アプリケーションプラットフォームMendixを利用して、2つのモバイルアプリを配信しています。私たちがMendixを利用して構築したサービスは、すでに月間百万以上のページビューとなっており、このアプリケーションを通じてすでに数百万件のトランザクションを処理しています。つい最近公開されたホームページを見ると、大成功を収めています。私たちは大絶賛を浴びており、人々はすでにログインしはじめています。

ドバイ市政府とRapidData Technologies社のチームは1年も経たないうちに、すでにデジタル化プロジェクトの半分以上を完了し、1か月のうちに10ものサービスを導入したのです」とBegum氏は述べています。両チームとも、アラブ首長国連邦の建国50周年を記念するVision 2021計画の担当部分を、期限内に完成させることに自信を持っています。

「事業に関して言えば、指導者たちは、ITチームが協力的かどうかについて確かに関心を抱いています。ITチームは本当に我々の事業を理解しているのだろうか?我々の業務上の期待に応える能力を持っているだろうか?ITチームがこれを証明するために役立ったのが、実はこの魔法の道具、Mendixだったのです。Mendixのおかげで、デジタルサービスを迅速に提供することができ、ドバイ市政府の指導者たちは本当に喜んでいます」とInbasekaran氏は述べています。